あうの部屋は、使える状態ではなかった。本人のせいではなく、父のせいである。
　父は趣味人で荷物が多い。特に近年は、20年近く放っておいたバイク、ＮＳ４００Ｒに手を入れて再生することを目標に、仕事の合間合間に少しづつ取り組んできた。それなので、部品やカウルなどのバイク用品を中心に、荷物の少ないあうの部屋に侵出してきてしまい、主を乗っ取った形になっていた。
　父は常々、あうがまったく勉強せずにリビングでゲームをやりつづけることを憂慮していた。４月以降さらに深刻に悩んだ結果、導き出した結論は、あうの部屋を片付けて勉強に集中できるようにしなくてはだめだ、というものだった。幸い、ＮＳは車検も通り、通勤に利用できる状態になっていた。
　父は思い立ったが吉日と、荷物を片付けまくった。といっても、置き場所は無尽蔵にあるわけもなく、部屋の一部に高く積み上げた状態ではある。とにかく、スペースを確保できた後、（机は荷物に埋もれているので）勉強用の書き物机などを用意して、自室で勉強ができる形に整えてやるように私に厳命した。
　床がオイルで染みだらけになってしまったところもあったので敷き物を敷いた。例によってAmazonで折り畳み式のちゃぶ台とコンパクトな座椅子を購入、翌日に届く。あうと相談して、文房具などをそろえる。
　定期試験が近づいていた。