結局きょうも、さもあらばあれ

子離れせねばと思うこの頃…

PVアクセスランキング にほんブログ村

入学式の妄想 vs 新型コロナウイルス

 奮発して手に入れたバッグとぷうが選んでくれたスーツと靴を身に着け、初めて詰襟を来たあうと地下鉄の駅に向かう。最後の角を曲がるところで、横断歩道を渡ってきたM美ちゃんのお母さんとばったり会う。
「もしかして、あうちゃん?大きくなった~~」
「もう高校生?早いね~!おめでとう~!」
「どこの高校か聞いてもいい?」
「え~~!D高なの?すごい~~!」
「じゃあね~!入学式、いってらっしゃ~い!」
私は誇らしい気持ちで満足して地下鉄の階段を下りる。


 浮かれた見栄っ張りの馬鹿母だなとお思いかもしれないが、あうがD高を志した瞬間から、なんども思い描いていたシーンだった。常にこの妄想は私に寄り添い、不安や迷いが頭をもたげるたびに、このシーンが頭に描けるのだから諦める必要はないと思い直させてくれたのだ。心配しても始まらない。対策を考えて手を打てばいいのだ、と。


 ここで、ばったり会うのはM美ちゃんのお母さんでなければならない。
 M美ちゃんは、ぷうの小学校のときの仲良しだ。ジュニアオリンピックに何回かでるほど身体能力にすぐれていたM美ちゃんきょうだいは、いずれも公立中から難関高・難関大に入学した。つまり、なにごとにおいても非常に教育熱心だ。それだけでなく、あうと同い年の子がいないので、なんとなく比較して微妙な空気が流れる必要がない。なにより、さらっと校名を聞いてくれそう。そして、今は駅の逆側に住んでいるので、1年に1度ばったり会うかどうかのご無沙汰感も大事。
 ということで、入学する学校名を聞いてくれて、すごく褒めてくれながらも他に含みがないであろう、M美ちゃんのお母さんがベストと思われ、妄想の重要キャストとして登場していただいていたのである。


 この数か月自分自身の中で繰り返し思い描き、ついには、恥を捨てて家族にも語っていたこの妄想は、あまりにも具体的で目にも浮かぶところまできたので、D高合格以来、正夢ならぬ正妄想か、と期待していた。こうなったら、実際の入学式当日はM美ちゃんのお母さんじゃなくて駅のすぐ近くで仕事をしているKちゃんのお母さんでもいい、とまで思っていたのだが、ついに、単なる妄想で終わりつつある。
 入学式が、延期または中止されることになったのである。


 入学式が休みに行われる予定だったのでオットも出席することにして、スーツを新調した。上の写真は詰襟を受け取ってきた日に試着してみたときに撮ったものだが、入学式でちゃんと撮ってプリントして実家の父に送る約束もしていた。しばらく前に、入学式当日の家族の入校が禁止になっていたので、私の買い物はしなかったのだが、もろもろがっかりだ。
 新型コロナ対策では国民が一丸となることが第一なので当然だと理解しているが、気持ちの方は仕方ない。あ~あ、晴れやかな気持ちで入学式に出たかった。


 この学年は、小学校入学のタイミングで東日本大震災に遭っている。そのときのように、義務教育の終わりと新型コロナ禍をセットで記憶していくのだろうな。今のところ雪が積もったところしか見ていない桜と合わせて、早く思い出になってほしい春である。

×

非ログインユーザーとして返信する