セックス ドラッグ ロックンロール
あうが、小5以来の親友と仲違いした。
発端は、借りた教科書への落書きである。もろもろすべて、あうが悪い。
教科書は保健体育である。実物を見てはいないが、危険な薬物から身を守るためのページに『学校の先輩から薬物を勧められたらなんと言いますか。』といった設問があり、3か所、断る台詞を書くようになっているらしい。
そこに、タイトルの言葉を、3分割して記入した息子あうであった。
書いたのは3日ほど前であったが、昨日になって親友が激高、先生たちまでが出動する騒ぎになったそうだ。仲良くなって以来、これほど怒っている姿は一度しか見たことがなく、あうは驚きを隠せなかったが、とにかく平謝りに謝って収まった。
落書きを消してこの話はおしまい、となると思えたとき、駆け付けていた先生が、3学年の先生方みんなで問題を共有したいので消す前に回覧する、と言い出した。
あうにとっては、ブチ切れられようが驚いただけだったが、先生たちの目に触れる、というのが最悪の出来事だった。
それは、自分の品位や思春期のテレといった問題ではない。
この時点で、ロックンロールのロールを、”role”と書いてしまっていることに気づき、消したくて消したくてたまらない気持ちだったのだ。アポストロフィーは完ぺきだったのになぜ、と自分を呪った。
職員室で、英語担当の先生が見たらどう思うだろう。(英語じゃなくても気づくと思うが・・・)
帰宅後、英語の辞書を確認し、Rock'n Role に高尚な意味を見出そうとしていたが、徒労に終わっていた。
日頃からあうの適当さが嫌で積もり積もったのか、セックスという単語が汚らわしいと思ったか、原因はいくらか思い当たる。いずれにしても、あうが悪かった。ごめんなさい。
あうには、他人のものは他人のもので自分のものではない、自分では平気なことでも嫌だと思う人もいる、これぐらいなら問題ないだろうと自分が思うことでも人を嫌な気持ちにさせたのならいけないことなのだ、と、厳重注意した。